はじめに
僕は、高校数学で学んだどの分野よりも、集合と命題が好きだった。
異彩を放っていた。
数学の一分野であるのに教科書のページには数字が少なく、代わりに ”集合” ”要素” ”命題” ”証明” といった言葉が並んでいた。そして、それらの言葉は、僕が中学の時に高校数学に期待したイメージそのものを表現していた。
式の計算、実数、一次不等式と、中学数学で学んだことの復習のような内容に、半ば高校数学への憧れを忘れかけていた頃だった。僕は、小学校から中学校に上がって初めて "数学" を知った時のような感動を、再び感じていた。
やがて、僕はその数学の一分野が "証明" と深く関わっていることを学んだ。僕の "証明" に対するイメージといえば、中学校で学んだ三角形の合同や相似の証明くらいで、それらが何の為になされているかも分からなかった。少なくとも、僕が勝手に "証明" に期待していたものとは違った。
そして、僕はさらに詳しく知りたくなり、あれこれと本を探しているうちに、その分野の数学における正式名称を知った。
"数学基礎論" もしくは ”数理論理学”
――それは、数学そのものを問う数学だった。
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